「欄間」の美意識を現代に継承したテーブルです。
かつて日本の伝統的な家屋には、天井と鴨居の間に「欄間」と呼ばれる装飾的な下がり壁がありました。
この欄間は、単なる装飾としての役割だけでなく、光や風を通すという実用的な機能も果たし、高温多湿な日本の風土と共に育まれてきたデザインです。
その美意識と機能性を、現代のテーブルデザインに昇華させたのが本作です。
天板を「天井」に見立て、そこから下がる脚部を「欄間」に見立てた構成により、まるで空間全体がひとつの建築をなしているかのような存在感を放ちます。
その脚部には、伝統的な日本の模様「麻の葉文様」をレーザーカットで精緻に施し、光が差し込むことで床に美しい陰影を映し出します。
この光と影のコントラストが、退屈だった床面を静かで美しいアート空間へと変容させてくれます。
使用している素材は、冷たく鈍い輝きを放つステンレスと、温かみのあるブラックアッシュの木部。
異なる素材同士が対比することで、それぞれの質感がより引き立ち、洗練された佇まいを生み出しています。
その調和は、まるで静かに時が流れる和室の中で、自然と共に呼吸する建具のような存在感を感じさせます。
また、このテーブルは日本の伝統に根差しながらも、ベトナムという異国の地で職人たちの手によって丁寧に制作されました。
異なる文化圏の中で、伝統的な意匠が新たな息吹を受け、現代の生活空間にふさわしいモダンな造形へと生まれ変わっています。
この作品には、「静寂の中に宿る美しさ」と「時代を超えて受け継がれる日本の心」が込められています。
それは空間に凛とした品格と、奥行きある余白をもたらす、まさに現代の“欄間”と呼べる存在なのです。